self and others

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写真集

牛腸茂雄は幼児期に脊髄カリエスを患ったことにより、「小さい人」の外貌をもつ写真家だ。短い生の中で鋭い視点で写真を撮っている。

桑沢デザイン研究所のグラフィック・デザインを卒業し、「日々」「見慣れた街の中で」「self and others」等、家族や友人、町の人々を取っている。

小さい体を持った牛腸は周囲の人目を感じながら、他者と自己の相互作用を意識していた。

被写体は中心にいる構図が多く、人物との距離の間合いが、つかめそうでつかめない、一瞬のはかなさなようなものを感じてしまう。

子供たちにとって、小さい大人である牛腸は受け入れられた。

双子が手を握る写真。のちのインタビューでは、彼女らはこの写真が使われるのはあまり乗り気ではなったようだ。物のいい面ではなく、負の面も捉えるのが牛腸の良さなのかもしれない。

牛腸は子供の頃に発病し、入院生活をしていた。そのため公園で遊ぶ子供たちは彼の願望の投影だった。牛腸が桑沢デザインで出会った写真家、大辻清司は牛腸のこども写真を「願望の自画像」と称している。

いくつかの写真は、研究所の同期と撮影していた映画のシーンでもある。

父と母の写真もあり、母親はアップで写されるが、父はどこかかしげていて距離のある写真。距離の間合いに、牛腸との関係性が現れているかもしれない。

日本にロールシャハテストを紹介した人物の写真もあるようだ。

タイトルのself and othersは心理学者のRDレインから来ている。

R.D.レインは、精神医学の分野で革新的な考え方を提唱したイギリスの精神科医・心理学者。日本のサイコホラーゲーム「serial experiments lain」はこのRDlainから来ている。

彼は、自己と他者の関係を、人間の存在や経験の根本的な問題として捉えた。

他者との関わりの中で一人の人間として認知され、他者の目の中で自分の存在を確認できる。その経験の連続から自己同一性を作り出す。

家族関係の構築に失敗すると問題がある。例えば、親から矛盾した二つのことを言われた場合。

自己と他者の関係には、さまざまな相互作用=境地があると考えた。境地によって、自分や他人の実在性やアイデンティティが変化すると主張した。牛腸の特殊な身体性が作り出す他者との関係にも同じことが言える。

・心理学 → 分裂的自己 

追記:あずまんが大王というアニメを見て、牛腸に関連した話を書きました。

あずまんが大王 (tetutetugaku.com)

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