絵画研究①

「ドミニック=ポール・ペイロンネの「青い海」の構造を分解する。」

前回はこちら→11月に見つけた絵「子どもと素朴派」

●はじめに

僕は学生の頃から絵画研究ノートを付けていて、自分の絵をかくときにはよく、別の絵の構造を吸い出して転用したりしています。最近はあまりやっていなかったのですが、ブログでまた研究を再開させたいです。youtubeで話しながら描いてみたのでよければ覗いてください。

●分析する

それでは分析していきます。今まではルールなくやっていましたが、今回から以下のようなテンプレートを作りました。

1,全体

左上に元絵を貼り、その下にモノクロ化したものがあります。

右上は空白で、元絵を見ながら鉛筆で模写します。そしてその下には、ルネッサンス絵画に用いられた方法をつかって構図の分析をしています。

左側の2枚には、まず自分の感覚で、見えてくる形、視線の流れを描きます。僕にとっては絵画の画面は水面のようなもので、視線の流れは壁にあたると、また波が直角に折り返していきます。そうやって波が干渉しあって生まれる複雑な線の交錯が絵画的な画面を作ると僕は考えています。

以前都市設計者の方が、都市は水の流れのように作る。水が自然に流れる導線が求められると言っていました。絵画においてもそれは同じです。視線が循環し、無駄がなく、画面を追うための運動エネルギーをなるべく損なわないための通路を作る、自然なパターンを探します。

2,模写

一度模写をするのは、見ただけではその絵のことがわからないからです。(僕の模写も精度が低すぎて駄目ですが・・・)試しに模写をしてみると、見ているだけではわからなかった、構造や特徴が見えてきます。離れた場所で形が反復されていたり、微妙な濃淡の違いに意味があったり、色々・・・。

模写して見つけた画面の中の新しい関係性やポイントについても、左側に追記していきます。

4,構図の分解

画面右下では、ルネッサンスの絵画分析に用いられていた手法を使っています。構図の起点になるポイントを見つけたらそこから縦と横に垂直な線を引きます。そして、画面の枠との交点から、45度に線を引き、それが壁にぶつかったらまた90度折り返して進み、また枠に当たったら90度折り返すという作業を続けます。これを何度か繰り返すと、どこかで始まりの地点に戻ることがあります。そして、今まで引いた線の交錯した点、枠に当たった点から垂直に下した線、が、画面を分割する境界になったり、視線を集めるアクセントの部分になったりします。

5、コメント

右の余白に、この絵のカラーサークルと、思ったこと等を書きます。

今回は、海の絵から、クリムトと江上茂雄を思い出しました。どちらも、画面いっぱいに海の広がる絵を描いています。ですが、この二人の場合は海の上の方に何か島や建物、対岸といったモチーフが切り取られるように上部に配置されていて、海を見つつも、その隠れたモチーフへ吸い込まれるような画面構成になっています。その点、今回の「青い海」は海がただ広がっているだけで、その先には何もありません。その無であることが、この絵の良さになっているように思います。この無のパターンには、福田平八郎や坂本トクロウの絵にある、詫び寂的な自然のまなざしも感じます。ただその二人にも、基本的に地平線は描かず、パースを伴わない面のパターンという特徴があり、今回の絵はその点で違います。

そして質感としては、オキーフや素朴派、ディズニーのファンタジアのような、日本にはない描き方があります。細かい単位で波のグラデーションが反復され、雲の運動も連続した渦のようにデフォルメされています。細かい模様をちっこく描くことで、ファンタジアの水や溶岩のような、物体の動きの異質さがこの絵に閉じ込められているようです。

この絵は面に広がるパターンを用いつつ、パースで空間を持たせるが、その先には何も配置しない。しかし、画面の空間とは別に、平面的なグラデーションのタッチを入れることで、パースによらない視線の循環を作り出している。それによって視線は地平線へ持っていかれることなく、無を前にただ全体をみるという状況を作り出しているように感じました。

●最後に

ここまで分析をした後は、復習としてこの絵と同じ構造を使って自分で新しい絵を描くという課題を設けています。また次回そちらもやってみようと思います。

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