エブエブ(everything everywhere all at once)を観ました。ネットを知る子供世代と親世代との分断、救済と自決、Qアノンについて。

everything everywhere all at onceみました。

前情報なしで行ったけど、だいぶよかったです。

色々な名作が詰まってましたね。

なんだか、akiraとシンエヴァンゲリオンへの回答って感じがしました。

●構造はマトリックス

冒頭はマトリックスと同じ構造になってますね

平凡で、退屈な人生を送っていた主人公。マトリックスでは、平凡な都市のサラリーマン、エブエブでは平凡な自営業の主婦です。彼らはある時、謎の人物から不可解な指示を受け取ります。仕事中のオフィスでは主人公を狙う追手が現れ、主人公が謎の指示を実行します。そうすると、この世のものとは思えない現象が起き、主人公も信じ、謎の人物についていくことに…。そして、開眼するか、元の世界へ戻るか、選択を迫られます。開眼、つまり、マトリックスでいう赤い薬を飲むと言う選択をした主人公は、この世界の別の側面を知ります。世界は別にも存在しており、謎の男は別の世界からVR技術のようなものでこの世界へ侵入していたこともわかります。

謎の男は、主人公が世界を救う特別な存在だと信じていて、君なら跳べる!!と言います。エブエブでは並行世界への意識のダイブ、マトリックスでは、仮想世界でビルからビルへジャンプできるかのテストでした。周りの人は冷ややかでしたが、謎の男は信じていた。しかし、主人公はジャンプに失敗します。一度は皆に失望されますが、2度目のジャンプがうまくいき、主人公はここで認められます。

戦いに備え、さまざまな武術をマスターすることになった主人公は、マトリックスでは武術の記憶をインストール、エブエブでは並行世界の格闘家の自分にダイブ。そして次々とやってくる追手を倒します。最終的に、実は敵は自分が生み出したものだと気付く主人公。マトリックスでは、主人公が得た特別存在としての力をコピーした存在が敵でした。エブエブでも、敵は主人公の娘であり、娘の力は並行世界の自分が教え込んだものとわかります。

●力の目覚めは、保護者への反抗

そして自分の娘の中に悪の親玉がいると知るシーン。これはAKIRAで、病院に連れて行かれた鉄雄と金田の再会のシーンに似ていますね。

細い廊下にやってきたジョブ=鉄雄。警備員が侮って止め、はじめはそれにも受け答えする鉄雄ですが、周りの大人へ飽きたのか、睨め付け、自分の力を見せつけます。次々と超能力で人を薙ぎ倒し、照明の明滅で画面が乱れます。

母親=金田は、自分の長年連れ添った家族が豹変したことを受け入れられず、その変貌ぶりに対し戸惑い、あいつら(軍、ジョブ)が何かしたのか?と言います。

金田は鉄雄のいる暴走族の族長として鉄雄の面倒を観ていたため、エブエブでの親子関係に近いです。 鉄雄は金田に反抗期を示し、エブエブでも同様です。

ツインピークス+αとの関連。悪の根源。

周りの人間に次々と悪者が憑依するのは、ツインピークスのボブのようでもありました。ジョブ=ボブということです。旦那は火消しであり、ホワイトロッジからの使者。娘はブラックロッジからの使者、つまり、リーランドパーマーですね。

実際、エブリンがパラレルワールドにつながる際に、ツインピークスのブラックロッジが一瞬映り込みました。これはツインピークスのボブがジョブにつながる有力な証拠になります。

旦那が並行世界との連絡のためにドーナッツを食べる姿は、クーパー捜査官と繋がります。

ツインピークスでは、核爆弾という人間の負の凝縮からジュディが生まれ、ブラックロッジになったように、エブエブでは思春期の少女の悲しさが凝縮され、ベーグルブラックホールからジョブを生み出しました。ジョブはボブのように、さまざまな人間の負の感情を煽り、操ります。

ジャンプする際、主人公がゲームの分岐点のようなuiを見るのは、フリーガイのようですね。フリーガイもほとんどマトリックスのような構造で、人々が生きているこの世界は、実はゲームの中の世界だった、という話です。エブエブでの一番最初の世界線は、武闘家のエブリンが見ている映画の中の世界だったので、他の世界がゲーム、もしくはあの世界全体がゲームの中でもおかしくないです。

別世界でのシーン。2001年宇宙の旅のオマージュがありました。

猿が初めて道具を使って、他の動物を殺害する。人類の進化の分岐点の映像です。サルは原作では骨を道具に使っていましたが、エブエブでは道具がソーセージの生えた指になっていましたね・・・。

●親と子の対話

そして最後、親子の戦いに突入します。ここはシンエヴァンゲリオンの親子が逆転しています。シンエヴァンゲリオンでは父親の碇ゲンドウがいつまでも子供のままで、シンジが落とし前をつける羽目になっていました。が、エブエブではちゃんと親がなんとかしてましたね。

ブラックホールに吸い込まれようとしている仲間に対して、何をするか。ここでの選択は、再びAIKIRAに戻ります。AIKIRAでは、最後に鉄雄が宇宙に吸い込まれ、金田に助けを求めます、エブエブでも、ブラックホールに飲まれようとする娘が、やっと母親に対して素直になります。

金田は最後鉄雄を助けきれず、金田だけブラックホールから出てきて、鉄雄は別の宇宙へ消えてしまいます。

エブリンも、一度、娘を見送りかけたけれど、AKIRAとは違い最後に踏みとどまり、待ってと、声をかけます。ここが大きな違いですね。

日本のアニメでは、子供が闇の穴へ落ちていく時、いつも親が不在です。エヴァ破の綾波レイでも、ケロロ軍曹深海のプリンセスでも、闇に落ちた時、助けてくれるのは親ではなく、親代わりの仲間でした。これは日本の特徴なのかもしれません。

エブエブでは、娘には恋人がいましたが、娘の闇を救うのは恋人ではなく親です。

最近の萌えアニメを見ていると、例えば「おにまい」でも、親の存在が完全になくなっているコンテンツは多いと思います。もう親は頼れない、世代間の断絶がここにあるのかもしれません。

マルチバースはインターネットとメタバース

僕はエブエブでのメタバースの繋がりは、世界へ開かれたインターネットのメタファーだと思っています。マトリックスもサイバー空間なので、そこはリンクしていますね。

娘はインターネットで多様な価値観と繋がり、レズビアンにもなれたけど、親はネットも使わず、テレビを見て労働者の保守的な思想に染まっています。

親世代がネットに触れて、多様な世界のあり方を知った時、それが子供と対話できる未来をつくる、そういう希望をかんじました。

●Qアノンについて

ただ、もう一つ思うのは、アメリカの現実では、qアノンなどの陰謀論の台頭もある。qアノンでは、本当の現実を知ることを「赤い薬を飲む」と表現する。これはマトリックスが元ネタになっている。

qはインターネット上の匿名の人物であり、正体は不明です。マルチバースでのジョブの複数性はQともつながるし、ベーグルの円環はQアノンのシンボルのようにも見えます。これらは僕のこじつけかもしれないが、日本でカルト宗教を扱った物語を見るとオウム真理教をおもいだすように、アメリカ人はベーグルの宗教を見てQアノンは連想しないのだろうか、とも思います。

●革命の敗者、自決

家族が実は新興宗教のトップだったという話は、日本のアニメでは輪るピングドラムがあります。兄弟の中に、オウム真理教の実行部隊と、それを阻止する存在と、2つの亡霊が迷い込む話。ラストは忘れてしまったけれど、、宗教に染まった側は、社会(親世代)から受け入れられなければ、自らの死を選びがちですね。

世界を巻き込んで滅ぼうとした宗教団体の末路としてクレヨンしんちゃん「大人帝国の逆襲」も思い出す。社会と繋がりたかったけれど、社会から阻害された人たちの逆襲。でも、それすらも受け入れられず、あとは死ぬだけ。。

最近、三島由紀夫と全共闘の討論会のドキュメンタリーを見たのですが、当時のアメリカ支配に対しての若者の反発と、実存的な問題についての討論でした。

「私が行動を起こす時は、諸君らと同じ非合法でやるほかないんだ。非合法で決闘の思想においてそれをやればそれは殺人犯だから、そうなったら自分もおまわりさんに捕まらないうちに、自決でもなんでも死にたいと思うんです。」

ちょうど大人帝国のモチーフになる、万博と同時期に三島は自決した。大人帝国では革命を起こすのは万博側を好んでいた側だが、当時実際の革命では、反万博、「反博」が盛り上がっていた。美術でのもの派や、ハイレッドセンター等と三島の討論を比べると、実存的な問題と都市や物に対する視点が通じているように感じる。

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