シーズン１，２と１度映画を挟んで、２５年後に再開したリターンズで構成される長編ドラマ作品、ツインピークス。
ツインピークスというアメリカの架空の田舎町を舞台に、殺人事件、メロドラマ、コメディ、オカルト、SFまで幅広く展開するが、最後にはすべての背景にブラックロッジという人間の悪の根源へ行きつく。エヴァやlainの源泉にもなっていて、世界に影響を与えた作品だ。
物語の中で起きる不可解な出来事についてはすでにネットにたくさん情報が上がっているため、ここでは、僕なりの別の解釈を書きたい。
シーズン１，２を終えて２５年後に、予告通り再開されたリミテッドイベントシリーズを中心に、物語とは少し離れて、原子力に焦点をあてる。
物語の具体的な解説は省略しいくつかの謎についての考察を書くため、初見の人はまず本編の視聴をおすすめします。
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ツインピークスで表現されたテーマ
-尽きることのない人類の欲望-
脅威として存在した原子力爆弾から、電気を生み出す原子力発電とそのコントロールへの転換。
ツインピークスリターンズの謎のひとつに、冒頭で登場するガサガサとしたノイズがある。この音は物語の中で何度か流れるが、正体は最後まで明かされない。
リンチ作品ではよく機械的なノイズが登場するため、この音の正体はまたただのノイズの可能性もあるのだが、僕はガイガーカウンターが放射能に反応している音だと思っている。
これは、ちょうど最近チェルノブイリ原発事故のドキュメンタリー映画を見ていて気づいた。
リターンズの後半に登場する、アメリカの核実験。1945年、マンハッタン計画によって落とされた核爆弾。これが、日本のシンゴジラと同様に怪物を生み出したのではないか？
戦後のゴジラは第五福竜丸を襲った核爆弾の力で生み出され、人間を襲う驚異として存在してきた。しかし、平成のシンゴジラでは福島第一原発事故後が舞台になっていて、原子力は核爆弾としてだけではなく、電気を生み出すエネルギー源として社会に必要とされているものへ変化している。シンゴジラは社会を破壊するリスクも持ちつつ、その放射能は未知の物質でできていて、半減期も短いなど、人間の科学をさらに発展させる可能性として登場している。
ツインピークスのシーズン1,2も、同様にボブの存在は脅威だった。しかし、リミテッドシリーズでは、そもそもボブがいるような世界の存在があの世界の根幹にあって、それなしでは世界が成立しないような描写にも思える。クーパーたちはまるで電子データのように存在していて、彼らは電気なしでは存在できない。
戦後、核がもたらした破壊の時代と、平成になり原子力なしでは世界が成立しなくなり、脅威としてありつつも人が世界を成立させるのに必要な一部になってしまった時代と、その二つが初代シリーズとリターンズの違いなのではないか、僕はそうとらえた。
うる星やつらの劇場版2ビューティフルドリーマーでは、フィクションの中に閉じ込められといたあたるが現実へ帰ろうと、夢から覚め、しかしまだ夢の中で、また覚めて、と繰り返す。夢を作り出す無邪鬼を倒せばきっと出られると思ってたが、そもそもうる星やつらがフィクションなのだから、無邪鬼（監督）がいないとあの世界は駆動しない。 この関係は、無邪鬼＝監督＝電気＝原子力として、ツインピークスにも言えるのではないか？
黒いやかんの正体は原子力発電機？
初登場は３話。画面は、どこか光に満ちたような映像になっているが、目のない女がやかんのレバーをひくとあたりを包んでいた光が消える。そして表面を電気が帯びて少女は感電して吹き飛んでしまった。しかしそのあとクーパーがやかんに触れても感電しなかったため、この帯電は一時的な物のようだ。
⇒原子力発電ではチェレンコフ放射という空気の発光現象がある。ただしこれは青い光で、ツインピークスの場面では全体的に赤く光っていた。
・地下で大量生産されるように並ぶやかんと、やかんの中にはいったジェフリーズ。
⇒このシーンはGANTZに非常によく似ている。GANTZでは、ある寝たきりの少女の夢のお告げによって黒い球体が大量生産されることになる。やかんの並びとGANTZボールの並びは瓜二つだ。そしてGANTZボールの中には人間が入っている。映画版では最後に主人公もGANTZボールの中に入るが、世界が主人公の意のままに改変されることになる。となると、世界はGANTZボールの中の人間の見る夢でもありそうだ。
・１７話では、けむりから立体映像が出る。そして電気が流れ、画面は暗転する。
今までの内容から、関連して思い浮かぶのは、「契約の箱」という古代の武器だ。契約の箱は、映画インディージョーンズ「失われたアークを求めて」にも登場する。そこでは、特殊な操作により、中から煙のような幽霊が飛び出し、あたりの人間の魂を吸い取ってしまう、古代の魔術的な装置だった。以下のyoutubeでは、それが原子力発電機と、そのエネルギーで駆動するデバイスだったのではという考察が載っている。
ブラックロッジが核の世界だとすると、鐘型の機械はおそらく家庭用原子力発電機だと思う。常に蒸気を生む程の熱量を持っている。これは、中で原子力発電がおこなわれていて、水で冷やすことで蒸気を生んでいるのではないか？と予想する。昔何かの本で、原子力技術がまだ明るかったころは、未来では各家庭に原子力発電所が設置されるだろうと書かれていた。まさにブラックロッジの世界では、原子力発電機が大量生産され、各家庭に一つ、ジェフリーズのように死者も電気で生き続けた世界があるのではないだろうか。
3、煤男の正体
チェルノブイリ原発事故のドキュメンタリーを見てほしい。チェルノブイリでは、溶け出した核燃料が地下水に侵入する危険があり、もしそうなれば原発から広範囲の井戸水、河川が汚染されて誰も水を飲めなくなるはずだった。それを防ぐためにたくさんの炭鉱夫が動員され、メルトダウンしている原発の直下を掘らせられた。
ツインピークスで登場したすす男たちはこう言った。
「これは水だ これは井戸だ たっぷりのんで 中に入れ 」
これは地下水に放射能が侵入して人の体に入り込む事を表しているように思う。虫が口に入るのは、人の体内へ2次的に汚染が広がることを示す。
もちろん彼らは大量の放射能を浴びて死んでいった。放射能に汚染されることは、ボブに乗っ取られたリーランドパーマーのようなもので、炭鉱夫は放射能に精神も汚染されたということだろう。
人造人間のボブと、人造人間ナウシカ
黒い煤男たちが核のメタファーの場合、ボブクーパーが彼らに体を塗りたくられて回復することにはどんな意味があるだろうか？岡田斗司夫は、ゴジラは実は牧教授自身で、実は人間なんじゃないかという説を出している。それはつまり、核を栄養に生きる人間ということになる。これがボブにも言えるなら・・？
風の谷のナウシカでは、世界が大量破壊兵器（おそらく核）によって汚染された世界の人類が登場し、森の中に潜む目に見えない毒を恐れて生きる人々の話だった。原作版では、ナウシカ達は実は遺伝子改造された人造人間で、むしろ汚染された世界の物質で生きていけるように作られていた。ここでは巨神兵がボブや煤男であり、王蟲が火消し、巨人だ。王蟲は放射能のある場所で死ぬことで、腐海の菌の苗床となり、最後に放射能を菌が分解する。
核の力がすべて消え去ったら。それを消すために作られた王蟲や腐海、ナウシカ達はいずれ消え去る運命だった。
ナウシカとゴジラの要素を合わせて考えると、恐らくブラックロッジの人間たちはすでに核エネルギーを人の生体にまで使っているだろう。原子力に依存した人類は、もうそれを止めることはできず、原子力＝シンゴジラ＝腐海＝ボブと共存せざるを得ない。
放射能による新生
煤男は放射能そのもので、ボブが煤男で復活するのはボブが放射能で生きてるからだろう。
風の谷のナウシカのラストシーン、ナウシカが死にかけても、腐海からやってきた王蟲がナウシカの体を包むとナウシカが生き返る場面がある。これは、森からやってきた煤男達と重なる。。
同じようで違う複数の人物について。二人のローラ、二人のハリートルーマン
リターンズの最後。ローラパーマーは別人として生まれ変わっていました。少し前に巨人がローラの映る黄金の球体を地球に放つ場面があったため、あれが別のローラなのでしょうか？
ここで、同じ人物がロッジにから送り込まれ別の人生を歩む可能性があると考えられます。
そうなると、このそもそもの発端であるマンハッタン計画。これがボブたちを生むわけですが、計画の責任者はアメリカ大統領、ハリー・ｓ・トルーマンです。これはツインピークスの保安官のハリーと同姓同名ですね。偶然でしょうか？大統領のハリーと、保安官のハリーは生きている時代がずれていますが、リターンズのラストでクーパーがローラに今の年号を尋ねたことから、同じ人間がずれた時代に生きている可能性もなくはないと思います。火消は核を消すためにローラを送り、ボブやジュディは核を生み出すためにトルーマンを送った。僕はそう考えました
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