三沢厚彦ANIMALS/Multi-dimensionsを見た

JR千葉駅から徒歩20分ほど。はじめて千葉市美術館に来た。初めの目的は、大学の頃教えてくださっていたアーティスト、金田実生さんのワークショップを見にきたのだけど、思いの外、企画展の三沢厚彦さんの作品に心を強く打たれてしまった。

会場で見た作品はどれも魅力的だった。以前武蔵野美術大学美術館で単体で作品を見たときは何も感じなかったのだけど、今回改めて見て大きく印象が変わった。なぜだろう。テキストと、作品の量と、過去の作品からの流れがあったからだろうか…。

三沢さんの作品は以下のような、動物を等身大で彫刻したものが点在している。

彫刻だけではなく、絵画作品も並ぶ。

会場に設置されていたテキストに下のようなことが書いてあったと思う。

機能を追求していくと動物的な形になっていく、それは当然だと思う。それぞれの動物が生きながらえるために膨大な時間をかけて獲得したかたちなのだから。

これを見て、単に表面的に見ていた動物から、より大きなものを背負っている存在として見れるようになった。

そして、会場内で見たワニの鱗の突起が特に印象が強かった。幾何学的なパターンの連続が均一に、人の手で彫られていることの狂気さのようなものを感じた。

そしてポスターにもなっているキメラが何よりも良い。タイトルにあるマルチディメンション=多次元への思いを感じれる。キメラを見ていると、神様のような、超越した存在への畏敬の念のようなものを感じた。

Youtubeでいくつかインタビュー動画があったから見た。以下のように話していた。

実際の動物はほとんど見ないんだけど、図鑑とかでサイズは見る。

写実的に動物を作っていくという感じではない。ほとんど本物を見ないから。

写実と、キャラクター化されたものと、その中間が彫刻のある場所。

現実のクマは狂暴でありつつ、テディベアはかわいいといわれる。そういった中で人の中の動物のリアリティは作られていく。その中で、人の作ったイメージとしてのクマは本物の存在を凌駕していく、それが面白いと動画内では語っている。

なるほど、本物を見ないというのが、はじめは観察の欠いた態度のように感じてしまった。しかし、現実を作品に取り込まないからこそ、無意識の中にあるイメージを頼りに動物を描けるのか、、と。

現実と、人に作られたイメージの狭間

キャラクター化された動物達は、現実ではなく、頭の中に存在している。頭の中のイメージを掘り起こしているようにも思う。これは夢十夜の第6夜で引用されていたミケランジェロの「木、石の中にあらかじめ像が宿っており、彫るということはその出現を手助けするだけ」という言葉も思い出させる。

キメラについて

また、キメラについてはこう語っていた。

実際相いれない、血族じゃないものが同じ空気を吸って存在していること。多分地上に初めにキメラが生まれたときは、地球の上に成り立つ、共存の形だったんじゃないか、と。

キメラは、ここでは一つの生態系そのものを示している、生命の循環の象徴でもあるようだ。

僕はこのキメラを見ていると、もののけ姫の獅子神を思い出す。獅子神もキメラのような見た目で、生と死を司り、森の生態系そのものでもあった。

キメラは何体か展示してあったが、そのうちの一つの首の後ろ、うなじの部分に人の顔は埋まっていたことが印象的だった。

それを見て初めに思ったのは、ちいかわや、ゴジラに登場する人の言葉を話すキメラのこと。進撃の巨人では、巨人の首に人が埋まっていたことなど。

でも、動画を見て思ったことは、人の存在も自然の共同体に組み込まれている、ということだ。キメラに取り込まれている人の顔は目を閉じていた。そしてキメラの頭部はやはりライオンであり、大きく目を見開いている。

頭が動物であることは良いことだ。世界が、理論や数値ではなく、自然の分散された状態で維持されているということだから。でも、世界の共同体の頭部が人間になってしまえば、世界の行く末は人がコントロールすることになる。

人の顔が埋まっている首の部分は、体の神経を司る場所。ここに人の顔があることが、やがて自然の共同体の中枢を奪い取り、人が自然を強奪することの前触れだったら、どうしようと不安にも思う。

実際もののけ姫では、獅子神の頭部は銃で撃ち落とされ、人を超えた神は死んでしまった。舞台になっているたたらばは製鉄所であり、そこからは自然ではなく、人の作り出す工業が世界をコントロールしていく。

…後半は僕の想像だけど、色々考えさせられる。生命の気配を纏った彫刻たちだった。

本当にいいと思った作品達は写真撮影不可だったため、このブログには載せていない。アトリエの道具と作りかけの作品をそのまま持ってきた空間や、杉戸洋などの絵画と並べた空間等、色々見所があった。

また三沢さんの展示があれば見に行きたい。

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展示
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