東京都美術館で開催されているマティス展を見てきた。日本での回顧展は20年ぶり。マティスの初期作品から晩年の切り絵、そしてマティスの設計した教会まで一通りの流れを追うことができる、とても見応えのある展示だった。
今回の作品のほとんどは、作品を貸し出しているポンピドゥーセンタ―のホームページから閲覧できる。Recherche – Centre Pompidou展示になかった作品も魅力的なものがいっぱいあり、解説もあって良い。
ここでは特に惹かれた裸婦の作品を記録しておく。
彫刻から絵画へ
●The Warehouse Dallas | Henri Matisse
このページで、いくつかのブロンズの画像を見ることができる。
会場にあったこの裸婦は、マティスの絵画によく登場するようで、会場の後の方の絵にも映り込んでいる。
この「青い裸体(ビスクラへの想い)」 は会場にはなかった作品。この絵画は展示にはなかったものの同時期に描かれている。
この絵がピカソとブラックへ影響を与え、同年にピカソが描いた「アヴィニョンの娘たち」のきっかけになったという。この絵には胸や腕、脚の位置を後から修正した跡がわざと残されているが、これがキュビズムの動きへ継承されたと考えると、重要な作品だと思う。
また、タイトルのブルーヌードは、晩年の青い切り絵の裸婦像にも通じる言葉にみえる。
均肉の部位ごとに線が一本ずつ丸く伸びていて、デフォルメが気持ちい。真似して描いてみても、見ていても、楽しい。
この絵には先ほど紹介したヌードの彫刻がモチーフとして登場している。
the back series(背中)
1909年から1930年の間に制作されたレリーフ彫刻。
最初の彫刻作品は写実的なフォルムをしているけど、次にそれを石膏で型取り、複製、削ったりたりを繰り返すことで徐々に抽象的なフォルムに変化させたという。最初はだいぶエロティックだけれど、徐々に丸くかわいいフォルムなっているように思う。
このシリーズの最初の形態は当時マティスが所有していたセザンヌの「Three Bathers」での女性の背中の造形と近似している。the back seriesに限らず、マティスはこの水浴者のイメージからたくさんの作品を作っているようだ。
水浴者
晩年のマティスのこの切り絵たち。マティスは紙を切って絵を描く作業は彫刻のレリーフに通じると語っていたそう。確かに、レリーフでは段階的に、女性の写実的な肉付きのタッチが、手で描いて気持ちのいいような、再解釈されたものへ変わっていった。この切り絵たちも、現実的なフォルムよりも、よりデフォルメされて一つのリズムになっているように見える。
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