初めてムサビの市谷キャンパスへ行った。
平山正直さんがアンリマティスの生涯を辿って描いたドローイングの展示だが、行った日が丁度初日で石川卓磨さんのトークショーがあった。それを聞いてからまた展示を見る流れになる。僕は大学3年からコロナ渦でしばらくオープニングパーティーなど行ったことがなかったから、新鮮だった。
開発の再開発
この展示は石川卓磨さんのキュレーション。石川さんは「蜘蛛と箒」という美術系の講座を開講している。僕も一度だけ受講したことがある。
まず、石川さんが中心となって話すのをしばらく聞いていた。
ギャラリーαMについての説明から始まる。
ギャラリーであれば商業的なものを扱い、美術館では集客や成果が必要ーそこで漏れてくる、まだ目的や価値がぼやけている作品を扱う場として、まだ価値の未消化な作家を紹介する、ノンプロフィット(非営利)な場を提供できるのは大学であろうと、だからαMをやっているという話だった。αMは武蔵野美術大学の運営しているギャラリー。この前まで学生だった僕としては、アキバタマビみたいに学生の使える場だったらいいのに、ともたまに思うけど。
毎回キュレーターが変わっても、受け皿という場所が変わらないとどこか落ち着いて澱んでしまう。そのために市ヶ谷に移転した、ということらしい。
今回の展示は、「開発の再開発」というシリーズの1回目の展示。
開発は資本主義の楽観的な拡大によって駆動しているが、そうした果てにブラック・ライヴズ・マター、ミートゥー、歴史の終わり、大きな物語の終焉、小さな物語、といった様々な歴史の流れが終わりに向かい、そこに対局した彫刻、絵画等の伝統をポストヒストリカルな視点で再解釈は可能なのか、ということだった。
そしてキワに立つ人についての話も。複数ジャンルを越境できる人、ジャンルのキワにいる人は、新しいジャンルを創造できる。平山さんもデザインなのかアートなのか、キワにいるようで、今回も中心のパリではなく、ニースに行く、その視点のキワについてなども話していたと思う。
マティスの足跡をたどる旅
ある程度話してから、会場に移り平山さんと石川さんの対談へ変わる。
平山さんの作品は、みなA4サイズの容姿に描かれているが、同じような絵がところどころにまとめられている。
マティスの絵画の一部拡大したものや、ニースの風景、出来事が絵になっている。
絵の配置はそれぞれのモチーフに対応していて、窓の絵は窓のように配置されているのがよかった。
マティスの泊ったホテルにも立ち寄り、マティスの足取りをたどる旅とその途中の景色の絵たち。
A4サイズな理由について、スキャナーでスキャンできるから、という単純な理由なのが良かった。あー、そういう発想でいいんだよなーと安心。作品も番号で管理され、数字がどんどん大きくなってきてるのも、なんだかシステム化されたミニマルな感じが好きになった。
アートはちょっと硬さがあるけど、平山さんは他にも筆一本で描いてて筆も雑な扱いだったり、そういうラフさも何故か好感が持てるのが良い。
ちょうど今は東京都美術館でマティス展が開催されている。その展示の企画をしている方もこの展示に来たとトークで話していた。マティス展も見ごたえがある。平山さんの展示はもう終わってしまったけど、マティス展は8/20まで。
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